インフレや金利上昇、実質賃金の低下、建築費高騰など、不動産市場にとって喜ばしくないニュースが続いています。加えて「トランプ関税」が日本の産業に与える影響も懸念されます。
ただ、これらの事象は不動産の需要を低減させうるものであっても、安価で選択肢の多い中古住宅については逆に需要が上がる要素となる可能性があります。
建築費高騰・地価上昇などから新築住宅の供給数は大幅に減少
新築戸建ての着工数は、年減少傾向にあります。2006年からの約20年間で、新築住宅の着工数は約128万戸から約80万戸まで減少しています。マンションも同様に、昨今の供給数はピーク時の半分以下です。新築住宅の着工・供給数減少の背景には、人口の減少に加え、建築費や地価の上昇、好立地とされる土地の減少などがあるものと推測されます。
「中古住宅シフト」が加速
新築住宅の着工・供給数が減少する中、近年は中古住宅(既存住宅)流通比率が高まっています。中古住宅流通比率とは、市場に流通する住宅のうち中古住宅が占める割合を指します。2004年には26.5%だった中古住宅流通比率は、2022年には42.3%にまで上昇しています。
金利上昇・インフレ・建築費の高騰で中古住宅シフトはますます加速か
金利上昇や実質賃金の低下は、住宅予算の低下に直結します。同じ返済額であっても金利が上昇すれば借り入れられる金額が減り、物価高によって実質賃金が下がれば住宅に割ける予算が下がってしまうからです。
建築費や地価、人件費の高騰などから新築マンション価格は23区で1億円を突破し、注文住宅や建売住宅などの新築一戸建ての価格も大幅に上がっています。その結果、供給数が減り、消費者にとっては「選択肢」も少なくなっているのが現状です。
一方、中古住宅は数が多く、新築住宅と比べれば価格も手が届きやすいことから、今後はますます「中古住宅シフト」が加速していくものと考えられます。
市場を揺るがす問題・事象も中古住宅にとってはプラスになることも
▼中古マンション成約・在庫件数の推移
昨今は家計や不動産に良くない影響をもたらす事象が多数見られますが、引き続き低金利といえる水準を維持しており、新築住宅の高騰や供給減が見られる現在は、不動産の売り時ともいえます。
現に、中古マンション・中古戸建てともにここ数ヶ月、成約件数は大幅に増加し、在庫数が少なくなっている状況です。
▼中古戸建て成約・在庫件数の推移
中古住宅についても、新築住宅ほどではないにしても価格は上昇傾向にあります。
とはいえ、金利がさらに上がったり、実質賃金がさらに下がったりすることで、中古住宅ですら需要が低減すう可能性もゼロではありません。売り時を逃さないためにも、まずはご所有の不動産の「今」の価値を確認しておきましょう。